新着情報(2021年8月12日):シンガポールIRASが移転価格ガイドラインを更新
シンガポールの税務当局であるIRAS(Inland Revenue Authority of Singapore)は2021年8月10日付で「IRAS e-Tax Guide Transfer Pricing Guidelines (Sixth Edition)」(移転価格ガイドライン第6版)をウェブサイト上で公表しました。前回第5版が2018年2月に発行されて以来約3年半ぶりの更新となりました。
IRASは今年3月にも、シンガポールで多くみられる「統括事業」に係る専門的な移転価格ガイドラインを公表しています(弊社ウェブサイトのライブラリ2021年5月をご参照)が、今回は総合的な移転価格ガイドラインの更新となります。
今般更新された主な点としては以下の通りです。
- 移転価格文書に関するQ&Aの追加
Chapter 6 (Transfer pricing documentation)の最後に、Appendix BとしてQ&A(想定問答)が追加されました。
- 移転価格税務調査の明確化
従来は、移転価格税務執行について「移転価格コンサルテーション・プログラム」とソフトな名称をつけていましたが、今般からChapter 7 (Transfer pricing audit) と移転価格税務調査であることを明確化し、更正課税が行われた場合のサーチャージ(課徴金)及びペナルティについても明記されました。ちなみに、サーチャージは更正所得額の5%であり、欠損等で追徴税額がゼロの場合でも課されますが、以下の3要件を満たす場合には免除されます。
- 要請された資料の適宜提出など税務調査に協力的であった。
- 移転価格文書を規定に従って作成していた。
- 過去2年間において税務申告書提出、税金支払を期日内に行っていた。
また移転価格同時文書化を行っていなかった場合、最大S$10,000の移転価格ペナルティが別途課されます。
- 金融取引
金融取引については、従来はローン取引のみ記されていましたが、本第6版ではChapter 15 (Related party financial transactions<関連者間金融取引>)と題し、キャッシュプーリング、ヘッジ、保証、キャプティブ再保険の各取引についても簡単に記されました。2020年2月に最終化されたOECDの金融取引に関する移転価格ガイダンスにそれら取引が含まれたことを反映したものと思われます。
- 費用分担契約(Cost contribution arrangements、以下“CCA”)
CCAについては、OECD TPGには以前から記載されていたものの、シンガポールの移転価格ガイドラインでは今回初めてChapter 17として独立して記載されました。CCAの説明、独立企業間原則の適用方法など、内容はOECD TPGに則しています。
以上につきご不明な点がありましたら、弊社までお問い合わせください。