新着情報(2021年11月12日):国税庁が令和2事務年度の「相互協議の状況」を発表

国税庁は2021年(令和3年)10月、令和2事務年度(令和2年7月1日から令和3年6月30日まで)の「相互協議の状況」を発表しました。それによると、新型コロナウィルス感染拡大により企業活動が制限された影響か、相互協議事案の総発生件数は、前年度の200件から15件減少し185件と、前事務年度に続き2年度連続で減少しました。また総処理件数についても、前年度の186件から31件減少の155件となりました。発生件数が処理件数を大幅に上回ったことにより、繰越案件の件数は572件となり、4年度連続で過去最高を更新しました。

    相互協議事案のうち大部分を占める事前確認(以下“APA”)については、発生件数は前年度の148件から2件減少し146件へ、処理件数は前年度の145件から23件減少し122件となりました。

 (1)繰越事案の地域別内訳

    令和2事務年度末の繰越事案の数を国別に見ると、米国、中国、インド、韓国、ドイツの順となっています。前年度末と比べると中国がインドに代わって2位となっています。地域別では、アジア・大洋州が336件(前年度比+9件)、米州が123件(同-3件)、欧州が113件(同+24件)と、米州の事案が減少した一方でアジア・大洋州と欧州の事案が増加しており、特に欧州の繰越事案が大きく増加しました。

    相互協議事案全体に占めるAPAの割合をみると、米州では89%と高いのに対し、欧州では72%、アジア・太平洋では71%となっており、米州以外では移転価格をはじめとする課税事案が比較的多いことがうかがえます。

(2)処理事案1件当たりに要した平均期間

    令和2事務年度の処理事案1件当たりに要した平均期間は、前年度の29.4か月から30.3か月へと増加しました。その内訳をみると、APA事案の1件当たりの平均処理期間は前年度の30.7か月から29.4か月へと短縮された一方、課税事案の1件当たり平均処理期間は前年度の24.9か月から34.4か月へと大きく増加しました。

(3)処理事案の業種別内訳(カッコ内は前年度)

    製造業 約70%(70%)、貿易・卸売・小売業 約14%(17%)、その他 約15%(13%)

(4)処理事案の対象取引別内訳(カッコ内は前年度)

    棚卸資産取引 約44%(42%)、役務提供取引 約31%(33%)、無形資産取引 約25%(25%)

(5)処理事案の移転価格算定方法別内訳(カッコ内は前年度)

    取引単位営業利益法 約64%(59%)、独立価格比準法約4%(7%)、利益分割法 約3%(2%)、原価基準法 約1%(2%)、その他 約27%(30%)

 

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