2019年5月:中国の個人所得税改正に係る規定の明確化

 中国では昨年個人所得税法が改正され、今年1月から施行されましたが、それに関連して中国の財務・税務当局は今年3月14日付で、2つの公告を発表しました。特に中国に住所を有しない個人(日本人を含む外国人の出向者、出張者も通常該当)に対する扱いが明確化されており、今後の新たな指針となるものです。 以下、その概要を紹介します:

1.財政部・税務総局公告2019年第34(中国に居住しない個人の滞在時間決定のための基準)

(1)過去6 年間において、通年の滞在日数が1年でも183日を下回る、或いは1年でも30 日を超える出国がある場合、当該納税年度において海外源泉で且つ海外で支払われる所得について個人所得税を納税する必要はない、としています。“過去6年間”の起算は今年2019年からとなりましたので、本ルールの実際の適用は2025年からとなります。例えば、日本人Aさんが2019年~2024年の6年間連続で毎年183日以上中国に滞在し、且つ30日以上中国を出国した日が1年もなければ、Aさんは2025年も183日以上中国に滞在した場合、日本で受け取る日本勤務相当分の給与も含む全世界所得を課税されるという事になります。逆に言えば、Aさんが2025年における中国での全世界所得課税を逃れるためには、直前の2024年に30日超の中国出国があればよいことになります。

(2)183 日ルール(中国国内滞在日数が183 日以上の場合、居住者と判定)に基づき中国滞在日数をカウントする際、滞在時間が24 時間に満たない日は滞在日数に加えない事となりました。つまり、短期出張での出入国日や、香港から中国への日帰り出張の日などは滞在日数に含まれないことが明確化されました。

 

2.財政部・税務総局公告2019年第35(中国に居住しない個人のための個人所得税方針)

 中国に住所を有しない個人に関する課税所得の計算方法、租税条約適用に際しての取扱い、納税の方法等について明確化されました。これらを、中国国内・国外源泉所得別、支払先別、滞在日数別に整理すると、以下の表のようになります。出張者等滞在183日未満の非居住者が中国で働いた分の給与を中国国内の子会社や支店経由で支払うと中国で給与所得を課税されますので、従来同様ですが改めて留意が必要です。

〇:中国で課税、△:本来は中国で課税も、租税条約の適用により非課税、×:中国で非課税

※1:上級管理職とは、董事、監事、その他上級管理者(総経理、副総経理、部長クラスなど)を指す。

※2:但し過去6年間で1年でも中国を30日超出国していれば、C.に該当する(国外支払の国外源泉所得は非課税となる)

 (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

 (JAS月報2019年5月号掲載記事より転載)