日中移転価格コンサルティング・サービスのご案内

 中国では、2016年6月29日に国家税務総局によって公表された「関連取引の申告及び同時文書管理の改善に関する公告」(2016年第42号公告)により、従前の移転価格ガイドラインである「特別納税調整実施弁法(試行)」の内、同時文書化義務の部分を中心に大幅な改正が行われました(2016年より適用)。

 関連会社との取引がある中国企業は、独立企業間価格との比較分析を含む詳細な“同期資料”(=移転価格文書。申告期限と同時期に作成する、という意味で同期資料と呼ぶ)を税務申告期限迄に作成するという義務を負っていますが、本公告では同期資料はマスターファイル、ローカルファイル及び特殊事項ファイルを含むとし、各ファイルの具体的な内容、提出条件等について明確化しています。

第42号公告により改正された同期資料関連規定

(マスターファイル)

○ マスターファイルはグループ企業のグローバル事業全体の状況を示す文書であり、以下を含みます。
①組織構造
②事業内容
③無形資産
④融資活動
⑤財務・税務の状況

○ 以下の条件のいずれかを満たす場合、マスターファイルを準備しなければなりません。
①年度内に国外関連取引が発生し、且つ当企業の財務諸表を連結する多国籍グループ企業がすでにマスターファイルを準備している場合。
②年度関連取引総額が10億元を超える場合。

(ローカルファイル)

○ ローカルファイルは、企業の関連者間取引に関する詳細な情報を示す文書であり、従来からの同期資料に最も近いものですが、関連者間のバリューチェーン分析をはじめ、従来の同期資料より詳細な内容の記述が要求されています。内容は主に以下を含みます。
①企業概況
②関連者情報
③関連者間取引(概況、バリューチェーン分析、関連株式譲渡、関連者間サービス等)
④比較可能性分析
⑤移転価格算定方法の選択適用

○ 年度関連取引金額が以下のいずれかの条件に当てはまる企業は、ローカルファイルを準備しなければなりません。
①有形資産所有権の譲渡金額(来料加工業務は年度通関価格で計算)が2億元を超える場合。
②金融資産の譲渡金額が1億元を超える場合。
③無形資産所有権の譲渡金額が1億元を超える場合。
④その他の関連取引合計金額が4000万元を超える場合。

(特殊事項ファイル)

 特殊事項ファイルには、コストシェアリング契約特殊事項ファイル及び過少資本特殊事項ファイルを含みます。
①企業はコストシェアリング契約を締結又は実行するためには、コストシェアリング契約特殊事項ファイルを準備しなければなりません。
②企業の対関連者負債・資本比率が標準比率(金融機関以外は2:1)より高いにもかかわらず、独立企業間原則に則していることを説明する必要がある場合、過少資本特殊事項ファイルを準備しなければなりません。

(作成・提出期限)

 マスターファイルは企業グループ最終持株会社の会計年度終了後12ヶ月以内に作成しなければなりません。またローカルファイルと特殊事項ファイルは関連取引が発生した年度の翌年6月30日までに作成しなければなりません。それら同時文書は税務当局が請求してから30日以内に提出しなければなりません。

赤字企業の文書準備義務

 2017年3月、「特別納税調査調整および相互協議手続に関する管理弁法」(国家税務総局公告2017年第6号、以下“第6号公告”)が公布されました。

(第6号公告の第二十八条)の要旨:

1.企業が国外関連者のために来料加工または進料加工などの単一的な生産、販売または契約型研究開発業務に従事する場合、原則として合理的な利益水準を維持しなければならない。
2.上述の企業が欠損を計上する場合、国家税務総局が公布した「関連取引申告及び移転価格同時文書の管理に関する公告」(国家税務総局公告2016年42号)の移転価格同時文書の準備基準を満たすか否かに関わらず、欠損年度の同時文書のローカルファイルを準備しなければならない。税務機関は上述企業のローカルファイルを重点的に審査し、監督管理を強化する。
3.本来関連者が負うべき経営の意思決定、稼働率不足、製品の販売不振、研究開発の失敗等に起因するリスクおよび損失を上述企業が負うことになった場合、上述企業に対して税務機関は特別納税調整を実施することができる。

 つまり、昨年改正された前述の2016年第42公告に今回の第6号公告をあわせて、同期資料作成義務を免除されるはずの小規模な企業でも、機能リスクが限定された外資系企業が赤字の場合は、赤字の理由を問わず同期資料の作成義務を負うことが明らかになりました。これは今までも通達(国税函[2009]363号)で規定されていましたが、今回は正式なガイドラインとして定められました。

本公告の背景とその影響

 OECD及びG20諸国が推進していた税源浸食と所得の移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下“BEPS”)に対するアクション・プランの最終報告書が2015年10月に発表されたことを受け、既に日本及び韓国等においては、一定規模以上の企業に2016年度よりマスターファイル等新規則に対応した文書化を求める税制改正が行われましたが、この度中国も関係国として移転価格税制において三層構造による同時文書化義務の制定が求められる事となりました。

 第42号公告の発表により、中国の同時文書管理が一層厳しくなりましたので、日系を含む在中国外資企業の税務コンプライアンス負担が更に増加することになります。

日系中国企業がとるべき税務リスク対策

(1)第42号公告の同期資料作成条件に該当する場合
マスターファイル(12ヶ月以内に要作成):
・年度関連取引総額が10億元超
・日本で既にマスターファイルを作成している

ローカルファイル(翌年6月30日迄に要作成): 
・有形資産所有権の譲渡金額が2億元超
・金融資産の譲渡金額が1億元超
・無形資産所有権の譲渡金額が1億元超
・その他の関連取引合計金額が4,000万元超

特殊事項ファイル(翌年6月30日迄に要作成):
・コストシェアリング契約がある
・対関連者負債・資本比率が標準比率(金融機関以外は2:1)より高い

(2) 機能リスクが限定された企業が赤字の場合
 第42号公告の同期資料作成基準に該当しない小規模企業であっても、第6号公告の規定により、同期資料(ローカルファイル)を赤字年度の翌年6月30日までに作成しなければなりません。

 小規模の企業であっても、追徴課税による現金流出とそのようなコンプライアンス負担は大きなダメージとなります。同期資料の内容は最初から会社が独力で作成することは困難が予想されますので、その際はお気軽に弊社までご相談ください。

弊社によるサービス内容

 弊社は、中国の有力な移転価格専門家との提携・協働により、日系中国企業が現地の移転価格税制に対処するための、以下のようなサービスを行っています:

(1) リスク評価
・当該年度の業績見通しについてのヒアリング
・赤字見込みの場合、その原因(移転価格が原因か否か)の特定、及び黒字化の可能性について判断
・潜在的移転価格リスク金額の評価
・対策案の提示(黒字化対策、同期資料作成必要性の有無、同期資料の内容等)

(2) 黒字化対策導入支援(お客様の必要に応じて、適切な経営コンサルティング会社と連携します)

(3) 同期資料作成支援

 第42号公告の作成要件に該当する場合、又は赤字見込みで安全に黒字化することが困難な場合

弊社によるサービスの特徴

(1) 中国、日本両国の税務リスクに配慮した安全性の高い対策及び同期資料作成を行います。
(2) 同期資料は中国語及び日本語にて作成します。
(3) 会社の状況に適した、費用対効果の高い対応策を提案します。

本サービスの詳細につきましては、弊社までお問い合わせください。