2020年1月:GAFAの租税回避度ランキング

Fair Tax Markという2014年に設立された比較的新しい英国の非政府系組織は、これまで約50社の公正に法人税を支払っている企業に対し認証を与えています。これまでその活動は英国にとどまっていましたが、今般は国外に目を向け、デジタル・サービス税がフランスで導入されOECDなど世界的レベルでも検討されるきっかけになった、GAFA (Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとする米国大手IT企業の大規模な租税回避について検証するレポートを先月(2019年12月)発表しました。

本レポートは、GAFA+2社(Netflix、Microsoft)がいずれもシリコンヴァレー等米国西海岸に本社を置く事から、これら6社を“Silicon Six”と称し、各社の過去10年間における租税回避度合を悪質な順にランク付けしています。Silicon Six各社のSEC提出開示資料を基にした分析であり、特に目新しい部分はないものの、客観性は保たれており、各社の米国外での大規模な節税を数字で裏付ける内容となっています。以下、レポートの概要を紹介します。

(全般)

Silicon Sixの時価総額合計は$4.5兆(500兆円弱)と、ロンドン証券取引所に上場する1,000社超の企業の時価総額合計を上回っている。また、これを上回る経済規模の国は米国、中国、日本のみである。

このような、今や世界経済に大きな影響を与えるSilicon Sixが過去10年間(2010~2019年)に実際に支払った税額は合計$1,802億(約20兆円)と、税前利益($1兆1,095億<約122兆円>)の16.2%にとどまり、Silicon Sixの帳簿上の法人税支払額$2,805億(約30兆円)に比べ$1,000億も少ない。米国の法人税率が2017年まで35%(州税も含めた実効税率は約40%)であった事を考えると非常に少ない納税額であり、各社の節税指向を示している。

Silicon Sixは米国外で大規模な節税をしていると考えられる。実際Silicon Sixの帳簿上の支払税率は全体では税前利益の25.3%だが、米国外では8.4%と極端に低くなっている。

一方、米国上場企業が開示を要請されるUTB(uncertain tax benefits、税務調査において追徴される可能性の高い金額)は、Silicon Six合計で2010年の$89億(約9,800億円)から2019年は$473億(約5兆2千億円、追徴された場合の延滞税、ペナルティを含む)と10年間で5倍以上に急増しており、各社の節税指向が更に進んでいる事を示している。

(Silicon Sixの租税回避度ランキング)

1.Amazon

Amazonは過去10年間に実際に支払った税額が$34億ドル(約3,700億円)と規模の割に非常に少なく、税前利益に対する支払税率も12.7%と低い。米国外では殆ど税金を払っていないのを利して各国でマーケットシェアを拡大している。更に同社は直近で$93億(約1兆円)の繰越損失がある為、当面まともに税金を払いそうにない。

2.Facebook

売上規模はAmazonの5分の1以下にもかかわらず、過去10年ではAmazonの2倍以上となる$77億(約8,500億円)の税金を実際に支払っている。但しFacebookの実際に支払った税額の税前利益に対する率10.2%、及び米国外における帳簿上の支払税率5%は、共にSilicon Six中最低である。

3.Google(現在の上場企業名はAlphabet Inc.)

Googleは、全世界の支払税率23%はOECD加盟国平均(23.7%)に則していると説明しているが、同社が過去10年間実際に払っている税額の税前利益に対する割合は15.8%と低い。米国外における帳簿上の支払税率も過去10年平均で7.1%と非常に低いが、2018年度の同支払税率は6.5%と更に下がっており、節税指向に変化がない事を示している。

4.Netflix

過去10年間実際に払っている税額の税前利益に対する割合は15.8%と、Googleと同率であり低い。同社の利益率が他社に比べて低いこともあるが、過去10年間の実際の支払税額は$5.2億(約572億円)と断トツで少ない。

5.Apple

 自ら「世界最大の納税者」と言うだけあり、過去10年間の実際の支払税額は$938億(約10兆3千億円)とSilicon Six中最大である。しかし、その実際の支払税額の税前利益に対する率は17.1%、米国外における帳簿上の支払税率も8.9%と共に低く、グローバルな節税をうかがわせる。

6.Microsoft

 過去10年の実際の支払税額は$469億(約5兆1,600億円)とAppleに次いでSilicon Six中2位(但し税前利益に対する率は16.8%と低い)。LinkedIn買収資金手当の必要もあったが、オフショアの利益を最近米国に戻した。Silicon Sixの中では僅差だが最も租税回避度の低い企業と判断される。

 (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

 (JAS月報2020年1月号掲載記事より転載)