2018年2月:再びGoogleの租税回避報道

        初めてGoogleの租税回避報道が行われてから約7年、2018年新年早々に、7年前当時と全く同じ方法で同社が依然巨額の節税を行っている事が報道されました。以下、米国大手メデイアBloombergの記事の概略を紹介します。

      1.記事の概略

       持株会社Alphabet Inc.傘下のGoogleは、2016年において、バミューダに所在する実体のない関連会社に、前年比7%増の159億ユーロ(約2兆1千億円)の所得を移していたことが、オランダにおける公的資料から明らかになった。Googleは、米国外で稼いだ所得を節税する為に「Double Irish」と「Dutch Sandwich」という2つのスキームを用いる。これにより、まずアイルランド子会社から従業員のいないオランダ関連会社に所得を移し、次にアイルランドに登記された別の関連会社(住所はバミューダ)に移転する。

        アイルランド政府は、2015年より Double Irish の新規適用を廃止したが、既にこのスキームを使用しているGoogleなどの企業は、2020年末まで使用が認められている。

        またGoogleはアイルランド子会社が欧州など各国で広告事業主として売上を計上しているが、恒久的施設を有しない為各国はアイルランド子会社に税金を課すことが出来ず、そこでも巨額の税金を逃れている。

       米国の上場企業開示資料から、Googleはこれらのスキームにより2016年単年度で37億ドル(約4,100億円)を節税している計算になり、また2016年末現在米国外に607億ドル(7兆円弱)の利益を留保しており、それら留保金について米国の法人税等を未だ払っていない。

      2.スキームの概要

      (Googleの海外節税スキーム略図)

       

        (上記図における取引番号①~⑤は全てグループ間取引)

        ①海外事業に関する権利のライセンス付与

        ②ライセンスフィー支払(実際にはライセンスを買取した等の理由で米国には殆ど払っていないと推定される)

        ③サブ・ライセンス付与

        ④⑤サブ・ライセンスフィー支払い

       3.コメント

       上記の「Double Irish」及び「Dutch Sandwich」スキームは税法上合法とはいえ、個人的に最も奇異に感じるのは、各国(日本も含む)で広告事業の契約主体になっているGoogleアイルランド子会社に対し、恒久的施設が無い事を理由に各国が税金を徴収できていないという事です。それでもまだ欧州各国では、何とか課税しようという動きが見られます(フランスは先日裁判で敗訴)が、日本においては何も伝わってきません。Googleの日本法人も詳細は不明ですが相応な規模と言われており、Wikipediaによると日本法人の2015年度の純利益は42億円である事から、相応の税金を払っている可能性はあります。しかし、AdWordsなどの広告料がアイルランドに流れ直接課税できていないことにより日本の税務当局がGoogleから取り損ねている税額はそれを遥かに超えるものと推測されます。

        米国の税法は長年にわたり、米国企業が米国外で得た利益を国内に還元するまで米国の税金を繰り延べることで、海外所得をオフショアで維持するインセンティブを与えていました。しかし今年の1月から施行された米国の改正税法では、現在までに蓄積された未課税海外利益の15.5%(現金又は同等物の場合、それ以外は8%)に対して課税されるとなっています  ので、Googleがバミューダに蓄積した利益に対しても今後課税が行われる事になると考えられます。

        BEPS対策プロジェクト実施をはじめ主要国の租税回避阻止の動きは益々強まると思われる中、今までは非常にうまく立ち回っており、巨額の追徴課税を受けたという話さえ殆ど伝わってこないGoogleに対し各国がどれだけ対抗できるのか、今後注目したいと思います。

        (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

        (JAS月報2018年2月号掲載記事より転載)