新着情報(2025年11月15日):国税庁が令和6事務年度の「相互協議の状況」を発表
国税庁は2025年(令和7年)11月11日、令和6事務年度(令和6年7月1日から令和7年6月30日まで)の「相互協議の状況」を発表しました。
(1)全般
令和6事務年度における相互協議事案の発生件数は、前事務年度の212件から+68件(+32%)と大幅に増加し、過去最多であった令和4事務年度の301件に次ぐ280件となりました。
一方処理件数については、前事務年度の219件から23件(11%)増加の242件と4事務年度連続で増加し、前事務年度に引続き過去最多を更新しました。当事務年度については発生件数が処理件数を上回ったことにより、繰越案件の件数は前事務年度の735件から38件増の773件となり、過去最多を更新しました。
相互協議事案のうち大部分を占める事前確認(以下“APA”)に係る事案については、発生件数は前事務年度の167件から27件(16%)増の194件、処理件数は前事務年度の158件から36件(23%)増の194件となり、処理件数は前事務年度に続き過去最多を更新しました。
(2)繰越事案の地域別内訳
令和6事務年度末の繰越事案の数を国別に見ると、米国(25%)、インド(15%)、中国(13%)、韓国(12%)、ドイツ(5%)の順となっており、順位としては前事務年度と比べるとインドと中国が入れ替わりました。地域別では、アジア・大洋州が426件(前事務年度比+36件)、米州が211件(同+7件)とそれぞれ増加した一方、欧州・アフリカは136件(同-5件)と減少しました。繰越事案全体としては、アジア・大洋州事案が引続き過半数(55%)を占めています。
相互協議事案全体に占めるAPAの割合をみると、米州では94%と非常に高いのに対し、アジア・太平洋、欧州ではそれぞれ69%、75%となっており、米州以外では移転価格をはじめとする課税事案が比較的多いことがうかがえます。
(3)処理事案1件当たりに要した平均期間
令和6事務年度の処理事案1件当たりに要した平均期間は、前事務年度の31.8か月から39.6か月へと大幅に増加しました。その内訳をみると、APA事案の1件当たり平均処理期間は前事務年度の35.8か月から42.4か月へ、課税事案の1件当たり平均処理期間は前事務年度の21.5か月から28.5か月へと、共に大幅に増加しています。
特に、中国、インドなど相互協議の交渉が難しいとされる国が多いOECD非加盟国・地域との相互協議に係る1件当たり平均処理期間は49.0か月(前事務年度は42.2か月)と、OECDの勧告として示される平均処理期間24か月以内の2倍を上回りました。繰越件数全体の43%を占めるこれらOECD非加盟国・地域との相互協議が難しい状況が続いていることが推測されます。