米国IRSが2018年度APAレポートを発表

    米国内国歳入庁(Internal Revenue Service、以下“IRS”)は2019年3月22日付で、2018年度のAPAの状況をまとめたレポート(Announcement and Report concerning Advance Pricing Agreements、以下“APAレポート”)を発表しました。

    APAは移転価格算定方法について納税者と税務当局(一国又は二国間以上)との間で予め合意又は確認し、一定期間は税務調査が行われないという、移転価格税務リスクを回避する為の最も確実な手段です。米国では1991年から行われていますが、IRSによるAPAの年次報告書は2000年以降毎年発表されており、今年で20回目の報告書となります。ちなみに、APAが世界で初めて制度化されたのは日本ですが、日本の国税庁もIRSにならって2003年以降毎年APAレポートを発表しています。2018年度APAレポートの概要は以下の通りです:

1.申請件数

    2018年度のAPA申請件数は203件と、2017年度の101件から倍増しました。その内168件(83%)が二国間APA(7件の多国間APAを含む)で占められています。二国間APA申請件数の相手国で最も多いのは日本(34%)、次がインド(21%)となっており、米国で申請された二国間APAの5割超をこの両国向けが占めています。

    申請件数が倍増したのは、米国におけるAPA申請に当たってIRSに支払うユーザー・フィーが2018年6月30日以降、同年12月31日以降と2段階でほぼ2倍近くに急騰したことから、値上げ前の駆け込み申請が多数発生したことが原因です。ちなみに、ユーザー・フィーを先に満額払えば、その後120日以内に(正当な理由があれば更に30日の延長も可)完全なAPA申請書を提出する事を条件に、フィー支払日を申請日とみなすことが認められることを利用したフィー支払申請が2018年12月末時点で71件も(上記の203件とは別に)あったそうです。いかに駆け込み需要が多かったかがわかります。

2.締結件数

(1)全般

    2018年度のAPA締結件数は107件と、2017年度の116件に比べて9件減少しました。大幅に増えた申請の処理に追われたことで、財政赤字の影響で人数が減少しているAPA担当職員が駆け込み案件申請の対応に追われた事も一因と思われます。なお、全締結件数の内更新(renewal)案件数は62件、全体に占める更新案件の割合は58%と、全締結件数の約6割が比較的処理が容易な既存APAの更新であるという状況は2017年からほぼ変わっていません。

(2)二国間APA締結件数の国別内訳

    2018年度二国間APA締結のうち83件(78%)は二国間APA(2件の多国間APAを含む)となっています。二国間APAの相手国としては、日本が39%と引続きトップであり、2位のカナダ(20%)と合わせて全二国間APA処理の約6割が日本又はカナダの案件であった事になります。米国APAにおける日本のプレゼンスが未だ非常に大きい事がわかります。以下、3位韓国(10%)、4位メキシコ(6%)、5位オランダ(4%)となっています。2016年度にAPAが解禁されたインドは、申請件数では2位となっているものの、未だ処理完了には時間がかかるようです。

(3)締結対象取引の内容

 例年の傾向通り、2018年度締結件数の内、米国親会社と米国外子会社との取引に係る案件は全体の22%しかなく、少数派です。その他は基本的に米国外の企業による取引と考えられ、特に締結された日米間APAの殆どは日本企業による取引と思われます。

3.平均処理期間

    2018年度の締結案件における平均処理期間は42.8ヵ月と、2017年度の39.1ヵ月から4カ月弱増加、また全処理件数の中間値も33.8ヵ月から40.2ヵ月へと、半年以上大幅に延びました。APAレポートでは、この主な原因を「長期化していた案件を締結した事、及び相手国との相互協議日程調整が難航した事」としていますが、IRSのAPA部門トップであるディレクターのジョン・ヒューズ氏はインタビューにおいて、(米国財政赤字を背景とした)APA担当者数の削減が影響している事を認めています。IRSのユーザー・フィー上昇のみならず、処理期間の長期化によりビッグ4など専門家に支払う高額なフィーも更に増加する可能性があります。APA申請を検討している企業は、今一度事前に費用対効果を検証すべきでしょう。