国税庁が「平成30事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表

 国税庁は2019年(令和元年)12月13日付で「平成30事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表しました。日本企業や日本人の海外進出、海外投資が益々加速する中、国税庁は低税率国・地域をはじめとする諸外国の税務当局との租税情報交換協定、あるいは情報交換規定を主体とする租税協定等の締結を積極的に推進しています。このような海外税務当局との情報交換実績を公表し、海外所得情報捕捉に関する国税庁の積極的姿勢を世間に知らしめる事により、海外所得移転の事前予防効果もあるものと考えられます。

 本発表の概要は、以下の通りです:

(1)要請に基づく情報交換

 「要請に基づく情報交換」は、個別の納税者に対する調査において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局に対し、必要な海外取引情報、取引銀行の情報等の収集・提供を要請するものです。

 平成30事務年度(平成30年7月~令和元年6月)における、日本の国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は825件と、平成28 事務年度以降毎年増加しており、平成29事務年度の766件から約8%増加しました。内訳としては、アジア・大洋州向けが645件と約8割を占めおり、残りが米州向け(108件)、欧州その他向け(72件)となっています。一方、外国税務当局から日本側に寄せられた「要請に基づく情報交換」の要請件数は191件と、平成29事務年度の137件から約39%増加しました。

 但し、これらは全て要請件数であり、実際に情報を取得した件数ではありません。最近締結されている一連の情報交換規定では、要請された情報を提供するか否かの最終判断は基本的には要請を受けた側の税務当局の判断に委ねられていることもあり、実際にどの程度情報が要請側の当局に提供されたのかについては本発表からは明らかではありません。

(2)自発的情報交換

 「自発的情報交換」は、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。

 平成30事務年度における、日本の国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は126件と、前事務年度の157件に比べ減少しました。内訳としては、アジア・大洋州向けが100件ともっとも多くなっています。一方、外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は9,666件となっており、この理由としては、「特定の国から大量の情報を受領したことにより大幅に増加しております」(国税庁)とのことです。

(3)自動的情報交換

 「自動的情報交換」は、法定調書等から把握した非居住者への配当、不動産所得、無形資産使用料などの支払等に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付するものです。

 平成30事務年度における、日本の国税庁から外国税務当局に提供した法定調書情報の「自動的情報交換」の件数は約85万3千件と、前事務年度の約70万5千件から約14万8千件の大幅な増加となりました。内訳としては、日本から利子・配当等の支払いが多い欧州・その他の国・地域向けの提供が半数以上を占めています。一方、外国税務当局から国税庁に提供された法定調書情報の「自動的情報交換」の件数は約16万2千件と、前事務年度の12万3千件から増加しました。

 なお国税庁では、自動的情報交換により外国税務当局から提供を受けた利子、配当等に関する情報を申告内容と照合し、海外投資所得や国外財産等について内容を確認する必要があると認められた場合には税務調査を行うなど、効果的に活用しているとの事です。

 

(CRS情報の自動的情報交換)

 平成30事務年度における、国税庁からCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報(CRS情報)約9万件を58か国・地域に提供しました。内訳としては、アジア・大洋州向けが7万件以上と約8割を占めています。一方、外国税務当局からCRS情報約 74 万件を 74か国・地域から受領しました。内訳としては、アジア・大洋州からの受領が44万件と半数以上を占めています。

(CbCRの自動的情報交換)

 また、国税庁から 831 社分のCbCR(Country by Country Report:国別報告事項)を51か国・地域に提供した一方、外国税務当局から2,100社分のCbCRを42か国・地域から受領しました。

 

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