新着情報(2020年12月29日):フィリピンの移転価格情報開示及び移転価格文書の提出義務に関する新規則が大幅に修正

フィリピンの税務当局であるBIR(Bureau of Internal Revenue)は2020年12月18日付の歳入規則(RR)No.34-2020を発行しました(公表日は同年12月21日)。本ガイドラインは新聞に公告された同年12月23日より既に適用されています。

先に今年7月10日に公表されたRR No.19-2020、及びその運用通達である7月29日付公表のRMC No.76-2020においては、関連者間取引を有する全ての事業体は(売上等の規模にかかわらず)関連者間取引情報の開示フォームNo.1709及び添付資料として移転価格文書(Transfer Pricing Documentation、以下“TPD”)を作成の上、税務申告期限までに税務当局に提出しなければなりませんでした。世界に類を見ない、特に多くの中小企業にとってはあまりにも厳しすぎる規則であり、執行可能性にも疑問符が付く程のものでしたが、念のため弊社でも早めにお知らせしておりました(新着情報:2020年8月3日参照)。

しかし今般のRR No.34-2020では、それらが大幅に修正され、大規模納税者、優遇税制を受けている、欠損を連続して計上している等の要件に該当する納税者のみフォームNo.1709を税務申告期限までに提出義務が生じる事としました。且つTPDについては、一定以上の売上や関連者間取引額を有する納税者のみ、作成及び提出義務が生じますが、税務申告期限までにフォームNo.1709に添付して提出する義務はなくなり、税務当局の要請あり次第30日以内に提出が必要となりました。要するに、フォームNo.1709及びTPDに関する作成・提出義務を課される納税者の範囲が大きく限定され、多くの中小法人(日系企業も多く含まれる)は対応が不要になったと思われます。但しそれら中小法人は、今後財務諸表の注記において、本規則(RR No.34-2020)の対象外であることを開示しなければなりませんので、注意が必要です。

一方、今般修正後の限定された作成・提出義務に該当する企業は、ターゲットが絞られた分、今後税務当局の調査が入るか、TPD提出を要求されるリスクが明らかに高まったと言えます。TPDを当局の請求があってから30日以内に新規で作成することは困難ですので、未だTPDを作成した事がない企業は、2020年度の税務申告書を提出時頃までに確実にTPDを作成し、いつでも提出できるよう準備しておく必要があると考えます。

また、今般の修正にあわせてフォームNo.1709の書式が若干改正されましたので、該当する企業は新フォームを使用するよう注意する必要があります。

(以下、RR No.34-2020の暫定簡訳)

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(Section 1):目的

フォームNo. 1709(以下“RPTフォーム” <RPTはRelated Party Transactionの略>)の提出を要求する目的(納税者が独立企業間原則に従って関連者取引を行っているかを確認すること、その為にどの納税者に調査を実施するかを決定することなど)を達成すると共に、COVID-19の感染拡大を考慮した納税者への配慮及び当局の執行の効率化を図る観点も考慮し、RPTフォーム及び移転価格文書(TPD)等の提出に関する手順を合理化し、重要性の観点から提出義務者の基準値を設ける必要がある。

(Section 2):RPTフォームの提出

以下の納税者は年次税務申告書提出と同時にRPTフォームを提出する義務がある:

a) 大規模納税者(※売上高10億ペソ以上他諸条件に該当する納税者と思われます)

b) 経済特区に所在する等、税率優遇を享受している納税者

c) 当該年度及び直近の2年度連続でNet operating lossを計上した納税者

d) 上記a)~c)の納税者と取引がある関連者(経営関係者<個人>を除く)

(Section 3):TPD及び関係資料の提出

移転価格ガイドラインで定められているTPD及び全関係書類の準備及び提出は、Section 2で規定され、且つ以下の基準(a.~c.のいずれか)に該当する納税者に義務付けられる:

a. 当該年度における売上高が1.5億ペソ超、且つ関連者間取引額合計(全ての関連者との受取・支払額に加え、売掛、買掛、借入等の残高も含む)が90百万ペソ超

b. 当該年度における関連者取引額が、有形資産の売買であれば計60百万ペソ超、又はその他取引(サービス、金利、ロイヤルティ等)なら計15百万ペソ超

c. 当該年度の前年度において上記a.又はb.に該当しTPD提出が必要であった。

TPD及び関係資料は、RPTフォームに添付しての提出は行われないが、税務当局の要請があった後30日以内(延長不可)に提出しなければならない。

(Section 4):追加開示事項

本規則の上記Section 2の対象とならない納税者は、財務諸表の注記において、その旨(本規則で規定される関連者間取引開示義務の対象とならない旨を)開示する必要がある。

(Section 5):新しいRPTフォーム

簡略化された新フォームNo.1709を使用すること。

(Section 6):罰則

本規則に違反した場合、関連規定に従い罰則が課される。

(Section 7):修正/廃止

RR No. 19-2020、その関連通達であるRMC No. 76-2020、および本規則と矛盾するその他の関連する規定は、本規則発効により廃止又は修正される。

(Section 8):適用日

本規則は一般の新聞への公告掲載後直ちに適用される。

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以上につきご不明な点がありましたら、弊社までお問い合わせください。