新着情報(2021年8月2日):香港の税務当局がコロナ禍により生じる税務問題に関するガイダンスを発表

香港の税務当局であるIRD(Inland Revenue Department)は2021年7月29日付でウェブサイトに、「Tax Issues arising from the COVID-19 Pandemic(COVID-19感染拡大により生じる税務問題について)」と題したガイダンスを公表しました。

コロナ禍により生じる主要な税務問題としては、例えば香港で働いていた企業の経営者や従業員が本国に帰ったまま香港に帰れない場合(あるいはその逆の場合)の、企業や個人の税務上の居住地の問題、個人所得税、または法人税上の恒久的施設(Permanent Establishment、PE)課税の問題があげられます。また、コロナ禍による業績の悪化など状況の急変に伴う移転価格設定の問題もあります。本記事は、それらの問題に対するIRDの一般的なアプローチを簡潔に示したものになります。

本ガイダンスで示されるIRDのアプローチは、OECDが既に発表しているコロナ禍関連の税務ガイダンスと基本的に一致しています。つまり、税務上の居住地や所得税の問題については、コロナ禍により一時的にそれまでと違う状況に置かれている場合、それらにより特段の税務問題が生じる可能性は少ないことです。たとえば、従業員がコロナ禍により国境を越えた移動が出来なくなり、やむなくとどまっている国でのPE認定は行われないであろうし、またロックダウン等でやむなく香港にとどまることを余儀なくされた個人に対して、そのやむなくとどまっていた期間についてIRDは税務上の居住者判定(滞在日数が183日を超えるか否か)のための日数計算にはカウントしない、等です。但しコロナ禍が終息した後もそのような通常と違う状態が続くようであれば、税務上の調整が検討されることになるとも述べられています。

なお移転価格については、以下のように記されています:

  • 「コロナ禍が経済状況に与える影響の大きさを考慮すると、パンデミックの期間に個別の分析期間を設けるか、比較可能性分析を実行する際に赤字の比較対象を含めることが適切な場合がある。
  • 損失が独立企業間でも発生していることが判明した場合、(通常は損失の計上が認められない)リスクが限定された事業体でも損失計上が認められる可能性がある。
  • 政府の支援を受けることも、関連者間取引価格に影響を与える可能性がある。
  • IRDは、事前確認(APA)の取消し、解除、または改訂につながる条件が発生しない限り、既存のAPAを維持する。経済状況の重大な変化が重要な前提条件の違反につながる場合、納税者は同違反が発生してから1か月以内にIRDに通知する必要がある。

 

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