新着情報(2023年11月24日):国税庁が令和4事務年度の「相互協議の状況」を発表

国税庁は2023年(令和5年)11月10日、令和4事務年度(令和4年7月1日から令和5年6月30日まで)の「相互協議の状況」を発表しました。それによると、相互協議事案の発生件数は、前事務年度の246件から51件(22%)増加し301件となりました。新型コロナウィルス感染拡大(コロナ禍)の社会的制限が緩和された流れを受け、前事務年度に続いて2事務年度連続で過去最多を更新しました。

一方処理件数については、前事務年度の186件から5件(3%)増加の191件と、発生件数に比べると微増にとどまりましたが、これまでの最多であった平成30事務年度(187件)を上回り、こちらも過去最多を更新しました。但し、当該事務年度についても発生件数が処理件数を大幅に上回ったことにより、繰越案件の件数は前事務年度の632件から110件(17%)増の742件となり、6事務年度連続で過去最多を更新しました。

相互協議事案のうち大部分を占める事前確認(以下“APA”)に係る事案については、発生件数は前事務年度の188件から55件(29%)増加し243件へ、処理件数は前事務年度の130件から16件(12%)増加し146件となりました。総件数、APAのいずれも、新規発生件数の増加に処理件数が追い付いておらず、繰越事案は毎年増え続けています。

 (1)繰越事案の地域別内訳

令和4事務年度末の繰越事案の数を国別に見ると、米国(23%)、インド(15%)、中国(14%)、韓国(8%)、ドイツ(6%)の順となっており、順位としては前事務年度と比べるとインドと中国が入れ替わりました。地域別では、アジア・大洋州が407件(前事務年度比+56件)、米州が193件(同+55件)と大きく増加した一方、欧州(南アフリカを含む)が142件(同-1件)は横ばいでした。繰越事案全体としては、未だにアジア・大洋州事案が過半数(55%)を占めています。

相互協議事案全体に占めるAPAの割合をみると、米州では97%と非常に高いのに対し、アジア・太平洋、欧州では共に73%となっており、米州以外では移転価格をはじめとする課税事案が比較的多いことがうかがえます。

(2)処理事案1件当たりに要した平均期間

令和4事務年度の処理事案1件当たりに要した平均期間は、前年度の31.6か月から30.2か月へと若干短縮されました。その内訳をみると、APA事案の1件当たりの平均処理期間は前年度の31.6か月から30.5か月へ、課税事案の1件当たり平均処理期間も前年度の31.5か月から29.2か月へと、共に短くなりました。

ちなみに、OECD非加盟国・地域との相互協議に係る1件当たり平均処理期間は51.3か月(前事務年度は44.0か月)と逆に+7.3か月も延びており、中国、インドをはじめとするOECD非加盟国との相互協議事案が引続き難しいものであることがうかがえます。

(3)処理事案の業種別内訳(カッコ内は前年度)

製造業 約65%(約67%)、卸売・小売業 約23%(約20%)、その他 約12%(約13%)

(4)処理事案の対象取引別内訳(カッコ内は前年度)

棚卸資産取引 約45%(約46%)、役務提供取引 約34%(約31%)、無形資産取引 約21%(約23%)

(5)処理事案の移転価格算定方法別内訳(カッコ内は前年度)

取引単位営業利益法 約50%(約68%)、利益分割法 約10%(約6%)、独立価格比準法約4%(約7%)、原価基準法 約4%(約4%)、その他 約32%(約15%)