新着情報(2018年12月21日):中国が2017年度のAPAアニュアルレポートを発表

    中国の国家税務総局は12月6日付で、2017年度(2017年1月1日から12月31日まで)の事前確認(以下”APA”)に関する第9回アニュアルレポート(年次報告書)を発表しました。

    2017年度におけるAPAの総処理件数は前年度の14件より6件減少し8件となりました。内訳としては、一国向け(Unilateral)APAが3件(前年度から-5件)、二国間APAが5件(前年度から-1件)です。また、一国向けAPAの3件は全て新規の事案ですが、二国間APAの5件の内3件は以前に処理されたAPAの更新事案です。

(1)APAの業種別内訳

    2017年度に処理された8件のAPAの内7件は製造業の事案、残り1件は運送・流通業の事案でした。累計ベースでも、2005年度から2017年度までに処理された147件の内、製造業の事案は123件と84%を占めており、その他では、卸売・小売業が9件などとなっています。

(2)二国間APAの地域別内訳

    2017年度に処理された5件の二国間APAの内3件は欧州諸国との、2件がアジア諸国との事案です。累計ベースでは、2005年度から2015年度までに処理された二国間APA事案60件(内新規事案43件、更新事案17件)の内、対アジア諸国が39件と全体の65%を占め、対欧州が15件(25%)、対北米が6件(10%)となっています。

(3)平均処理期間

    2005年度から2017年度までに処理された147件の内79件(54%)は処理期間1年以内となっています。その他2年以内が42件、3年以内が13件となっており、3年以上かかった事案は今まで13件のみとなっています。中国のAPA処理件数は未だ日米などに比べるとかなり少ないですが、処理した事案については(他国に比べて)総じてかなり短い時間で行っていることがうかがえます。但し、2017年度に処理された二国間APA5件の内、3件は1年以内に処理されているものの、2件は3年以上かかりました。1年以内に処理された3件が更新事案、3年以上かかった2件が新規事案と仮定すると、二国間APAの処理期間が長期化している傾向が示されている可能性があります。

(4)繰越事案とその内訳

    2017年度末における税務当局による処理前の事案(申請意向を当局に提示した事案、及び申請済み処理待ちの事案)件数は計92件となっており、前年度末の162件から-70件と大幅に減少しました。内訳としては、一国向けAPAは+3件と増えたのですが、二国間APAが149件から76件へ、半数近くに減りました。特に申請意向を提示した事案が101件から27件へと激減しています。中国では税務当局における人員不足から、二国間APAの正式申請前に予備会談、意向申請など複数のプロセスを義務付け、正式申請を受付ける件数をかなり絞っているにしても、1年間でこれだけ件数を減らしたのは異様にみえますが、レポートにおいて特に説明はありません。

(5)処理事案の対象取引別内訳(2005年度~2017年度累計)

    有形資産取引 65%、 無形資産取引 16%、役務提供取引 19%

(6)処理事案の移転価格算定方法内訳(2005年度~2017年度累計)

    取引単位営業利益法(対総費用営業利益率) 43%

    取引単位営業利益法(売上高営業利益率) 34%

    原価基準法 11%

    (製造業の案件が多い事を反映し、製造業で多く用いられる対総費用営業利益率の使用が最も多い傾向が続いています。)

(7)担当人員配置

    2015年末現在、国家税務総局の本部(北京)でAPAを含めた移転価格を担当するスタッフは6人おり、担当する国や地域を反租税回避1組(日本と韓国を担当)、反租税回避2組(その他諸国を担当)に分けて業務を行っていました。その後担当人員に関する記載はAPAレポートから無くなりましたので現在の状況はわからないものの、処理件数はむしろ減っていることから、おそらく2年前と殆んど変わらない少人数で行っているのではないかと推測されます。

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