国税庁は2018年12月3日付で、「平成29事務年度法人税等の調査事績の概要」を発表しました。その中で国際課税の状況については以下の通りです。

    （以下は国税庁ウェブサイトより引用、但し1件当たり申告漏れ所得金額は弊社計算）

(1) 海外取引法人等に係る実地調査の状況

    平成29事務年度は、非違があった件数は前年度比34.9％増、申告漏れ所得金額も前年度比約55.1％増となり、特に申告漏れ所得金額は大幅な増加となりました。その結果、1件当たり申告漏れ所得金額は前年度の0.71億円から0.82億円へと増加しました。

(2) 外国子会社合算税制（タックス・ヘイブン税制）に係る実地調査の状況

    タックス・ヘイブン税制については、申告漏れ件数は前年度比4件減少（-6.9%）しましたが、申告漏れ所得金額は前年度比1,110億円増加（+2,266%）と大幅に増加しました。よって1件当たり申告漏れ所得金額は前年度の0.84億円から21.46億円へ大幅な増加となりました。ソフトバンクグループに対する巨額（747億円）の更正が行われたとの報道があり、これが増加分の大半を占めていると思われます。

(3)移転価格税制に係る実地調査の状況

    移転価格税制の申告漏れ件数は前年度比9件増加 (+5.3%)したものの、申告漏れ所得金額は前年度比192億円減少（-30.6%）と大幅減少しました。よって、1件当たり申告漏れ所得金額についても前年度の3.71億円から2.44億円へと大幅に減少しました。

    但し、2016年度の税制改正で移転価格文書化制度に関する大幅な改正が行われたことを受けて、今年度以降の移転価格税務調査が再び活発化し、課税規模の拡大につながることが予想されますので、今後も注意が必要と思われます。

(4) 移転価格税制に係る事前確認の申出及び処理の状況

    移転価格税制に係る事前確認（“APA”）の申出及び処理の状況については、処理件数の増加を申出件数の増加が上回り、繰越件数は前年度比+12件増加し、400件となりました。

    本件についてご不明な点がありましたら、弊社までご遠慮なくご連絡ください。