新着情報(2018年12月3日):国税庁が平成29事務年度の「相互協議の状況」を発表

    国税庁は平成29年(2018年)11月付で、平成29事務年度(平成29年7月1日から平成30年6月30日まで)の「相互協議の状況」を発表しました。それによると、相互協議事案の総発生件数は前年度の162件から44件増加し206件となりました。一方総処理件数は、前年度の171件から5件減少し、166件となりました。

    相互協議事案のうち大部分を占める事前確認(以下“APA”)についても、発生件数は前年度の131件から35件増加し166件へ、処理件数は前年度の143件から21件減少し122件となりました。

(1)繰越案件の地域別内訳

    国税庁発表によると、平成29事務年度の繰越事案の数を国別に見ると、米国、中国、インド、韓国、英国の順となっています。地域別では、アジア・大洋州が262件、米州が134件、欧州が100件と、アジア大洋州が突出しています。おそらく、中国との間の移転価格課税に関する相互協議事案の処理が進んでおらず、繰越件数が増加しているのが主な原因と推測されます。相互協議事案全体に占めるAPA割合をみても、米州では95%、欧州でも81%を占めるのに対し、アジア・太平洋では68%にとどまっており、アジア・太平洋では移転価格課税事案が多いことがうかがえます。

(2)処理事案1件当たりに要した平均期間

    平成29事務年度の処理事案1件当たりに要した平均期間は、前年度の29.1か月から29.9か月へと増加しました。内APA事案の1件当たりの平均的な処理期間も、前年度の28.9か月から30.7か月へと増加しました。

(3)処理事案の業種別内訳(カッコ内は前年度)

    製造業 61%(63.7%)貿易・卸売・小売業 32%(27.5%)、その他 7%(8.8%)

(4)処理事案の対象取引別内訳(カッコ内は前年度)

    棚卸資産取引 43.9%(42.6%)、役務提供取引 29.4%(33.3%)、無形資産取引 26.8%(24.1%)

(5)処理事案の移転価格算定方法別内訳(カッコ内は前年度)

    取引単位営業利益法 61.7%(56.0%)、原価基準法 4.5%(8.6%)、独立価格比準法 4.5%(8.0%)、利益分割法 2.5%(6.3%)、その他 26.8%(20.6%)

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